数学ショートプログラムの効果的な使い方
更新日: (公開日: ) MATHEMATICS-HUMANITIES
数学ショートプログラムの効果的な使い方
【数学ショートプログラムの概要】
数学で有名な東京出版から出された難関国立用の参考書である。 参考書としての完成度も非常に高く、数学が得意な生徒でもさらに能力向上に役立つであろう。 扱っている内容も、数学的な背景もしっかりと扱い興味深いことも多く、得意な人が取り組むと楽しいと感じる本だ。 なので、 ・基本となるパターン解法は身につけたが、鮮やかな解法・数学的背景をもっと知りたい ・「大学への数学」独特の受験テクニックを知りたい という方には非常にお勧めできる本だ。 また,2部の演習問題は、問題レベルも高く、どんなレベルの人でも楽しめる本だ。 そして、問題作成のネタになるような知識も多く、作題の参考にもなると思われる。 しかし、あくまでお勧めできるのは以上で挙げたような層の人に対してであり、 一般的なこの本を購入しようと思う層、つまり受験に役立たせたい、入試問題が解けるようになりたいといった方々にはまったくお勧めできる本ではない。 理由は大きく分けて2つある。 一つ目は、「扱っているテクニックの殆ど、限定された状況でしか用いることのできないものばかりである」という点だ。 問題自体は有名で、何度も参考書で見かける問題ばかりだが、実際の入試の現場でこのようなテクニックが使える問題はわずかしか出題されないだろう。 もちろん、「定数分離」など使用頻度の高いテクニックも含まれてはいるが,これは本書でなくても扱われているものだ。 二つ目は、中途半端な学力の層が手を出すと,むしろ数学ができなくなる可能性があるという点だ。 本書で用いられている問題が「テクニックのための問題」であることから、実際の入試問題にそれを応用していく訓練は本書では積むことはできない。(二部に演習問題があるが、学力コンテストの問題ばかりだ。それは言い換えれば、テクニックをもとに作られた問題であるということだ。) 入試でこのようなテクニックが使える問題はわずか、と言ったが、 そのテクニックをどういう場合に用いると有用か?ということを理解できる段階に至っていない状態で、普段解くようなテクニックのために作られた問題でないようなものに闇雲に適用していては、むしろ平凡な発想が浮かびづらくなり、解けなくなってしまう。 もちろん、そういった解法の取捨選択が十分にできる人ならば使用しても問題はないが、 入試問題の大多数がこのようなテクニックを知らずとも解ける現状で、わざわざ約100題もの問題をやる価値はあまり無いのではないか。(受験勉強という意味で)
【数学ショートプログラムの使い方】
テクニック本と呼ばれる本書であるが、禁じ手の公式がずらずら並んでいるようなものではなく、数学の問題をちょっと上の視点から見ようという内容。 ショートプログラムというだけあって一問が短くすぐ終り、また公式を覚えるのとは違い、考え方を身につけるというスタンスなので脳のメモリを食わずに実力がアップする。 演習書というより、読み物に近いので、あいている時間等に軽くやるという使い方がいいだろう。 決して、本書のようなテクニック本をメインにはせず、趣味程度に使うようにしておこう。
【数学ショートプログラムの総評】
決して受験に必須な類の本ではない。 世に言うテクニック本。 しかし、そのテクニックを数学的理論に基づいて懇切丁寧に解説している。 大数読者なら聞いたことのある言葉が次々飛び交うが、大数読者でなくても十分理解できるように書いてある。序盤のまとめも秀逸。 典型的解法で凝り固まった頭を柔らかくするには、とても役立つ本だ。 各分野のつながりが無視されている現在の状況に対して、「数学とは、正しい理論に基づく限り、自由な発想で解答を書けば良い」という理念が現れているような気がする。 夏休み辺りに何か刺激が欲しい人向け。一通りIAIIB分野をやっていないと意味不明なので、まず典型的な解法が頭に無ければ話になりません。 自分の実力と見合っているか、よく相談した上で取り組もう。