日本一詳しい物理基礎・物理の解き方の効果的な使い方
更新日: (公開日: ) PHYSICS
日本一詳しい物理基礎・物理の解き方
日本一詳しい物理基礎・物理の解き方の概要
著者の田原真人氏は「物理ネット予備校」という、近年話題を集めるネット予備校の代表である。
そんな著者自身が渾身の1冊と自負するのが、この「大学入試完全網羅 日本一詳しい物理基礎・物理の解き方」だ。
日本一詳しい物理基礎・物理の解き方の対象者
対象者については、高校物理を1通り終えた国公立を志望とする受験生である。
本書は、扱っている問題内容自体は入試頻出のものでレベルも入試標準レベルなので決して難しくはない問題で構成されている。
しかし、本書はバリバリの「微積物理」である。
微積物理とは、その名の通り微積分をふんだんに用いて入試物理を解く解法・考え方である。
本来、大学受験の物理は微積分を用いずに解けるようになっているが、この微積物理のように微積分を用いて初めて本質・現象が理解できるといったことも少なくない。
さらに、微積分を用いた解法はテクニック的な要素もあるので、非常に短時間で解答が済むことも多々ある。
ここまでいうと、微積物理はいいことづくめのように聞こえるであろう。
しかし、現状、教育界では「微積分を用いない派」と「微積物理派」で両極に分かれているのである。
それはなぜか?
微積分を用いる物理がそもそも教科書に載っていないからであろう。
すなわち、教科書内容以上のことは入試には出ないので、教科書以上のこと(微積物理)は学ぶ必要がないということだ。
さらに微積物理を下手に学んでしまうと、「微積分を学ぶこと」=「時短テクニック」と認識してしまう受験生が量産されてしまうからだ。
「なぜ、微積分が物理で必要なのか」「微積分とはそもそも何なのか」など、ここまで深く理解できた受験生がはじめて微積物理の本質に気づき、微積物理の利点を活かすことが出来るのだ。
すなわち、「早い段階で高校物理を一通り終え、余裕のある生徒」が使えるようになるのが微積物理なのだろう。
日本一詳しい物理基礎・物理の解き方のカテゴリ
アウトプットである。
タイトルからすると、参考書のように見えるが、これは問題集である。
それも微積物理を使う練習をするための問題集である。
微積物理は何たるか。を知らない受験生にとっては、まったくちんぷんかんぷんとなってしまうので、よく注意をしてほしい。
日本一詳しい物理基礎・物理の解き方の使用時期
使用時期は受験中期以降だ。
高校1、2年生はまず手を出す必要はない。
3年生になるまでは、しっかりと微積分を用いない高校物理をマスターする必要があるからだ。
高校3年生になった時点で、物理が自信満々なら本書に取り組んでもいいだろうが、夏まではやはりしっかりと教科書通りの物理をマスターするのが好ましい。
微積物理に否定的というわけではないが、やはり微積物理は合う合わないが顕著に現れ、なおかつ微積物理を教えてもらう先生によって微積物理が本当にわかるか否かが分かれるからだ。
日本一詳しい物理基礎・物理の解き方の問題レベル
問題レベルは最初にも述べていたが、標準レベルだ。
「入試頻出問題を微積物理で解こう」というのが本書の狙いのように見えるので、入試標準レベルを中心に書かれた1冊だ。
日本一詳しい物理基礎・物理の解き方の特徴
本書は所謂「微積物理」の基本解説書・参考書ではなく、ましてや「高校物理」の参考書でも問題集でもない。
本書は微積物理でどのように入試問題を解けばよいかを詳しく解説したもので、微積物理の演習書的な性格が非常に出ている。
従って、物理の基本的な説明や、そもそもの微積物理の導入部分についての説明が全くないか非常に薄いため、現時点で物理が苦手な人、あるいはこれから高校の物理を学ぼうとしている人が本書に手を出しても、まったく歯が立たない。
またこれからはじめて微積物理を勉強してみたいと思っている人も同様であろう。
繰り返しになるが、高校物理を一通り終え、そして微積物理の理解を別の参考書等で終えたあとにこの演習書に取り組んでほしい。
日本一詳しい物理基礎・物理の解き方の使用方法
①微積物理の考え方を学べ
本書に取り組む前に、微積物理が何たるかを理解しておく必要がある。
微積物理の入門書はごまんとあるので、自分が気に入るものから手に取ってほしい。
②実際の入試問題で活かせ
そうして微積物理の考え方を学んだら、間をあけることなく、次は実践してほしい。
①の段階を飛ばして、②から入ると、微積物理は「単なる時短テクニック」という考え方になってしまい、これでは高校物理も微積物理もどっちつかずという最悪の状態になってしまう。
日本一詳しい物理基礎・物理の解き方の総評
問題演習が中心となっていて、微分積分の物理的な意味の説明などはお粗末な感じがする。
タイトルは正直名ばかりで、微積物理を理解している前提で進めているのが否めない。
しかも問題の解説の方でも新しい記号や文字が説明なしにいきなり出されたり、誤字脱字も多々目立ちつので「粗い」というのが率直な感想である。
まぁ、微積物理の演習書はなかなかないので、その点では貴重な存在とも言えるのだろう。