総合的研究数学の効果的な使い方
更新日: (公開日: ) MATHEMATICS-HUMANITIES
総合的研究数学の効果的な使い方
【総合的研究数学の概要】
数学教育に熱心な長岡先生の「超力作」だ。
ⅠA・ⅡB・Ⅲと3冊合わせれば、全部で約3000ページほどだろう。
さらに全ページ、カラー刷りなのでレイアウトも完璧だ。
しばしば「カラー版のチャート式」と言われているようだが、まったくの別物と考えほしい。
本書の最大の特徴は帯にも書いているが、「本質からの理解」「じっくり考えて読む数学」がテーマとされているのだ。
一般的にチャートは「パターン問題」のインプットとされており、サクサクと何周も進めるようなスタイルだが、本書は時間をかけて解く進め方である。
そして導入部分に、長岡先生のフルパワーが感じられるほどの圧倒的な解説量。
長岡先生曰く、数学に必要なのは「定義からの理解」だ。
これには私も賛同で、本書には、ほぼすべての公式の背景・成り立ちなどを全力で書かれている。
公式にとどまらず、「関数」「集合」という数学的な単語の説明からも始めており、まさに「ぐうの音も出ない」とはこのことだろう。
なにも付け入るスキを与えない、基礎から応用にかけてのスムーズな橋渡し、難しい内容でも簡単に噛み砕いて説明するわかりやすさ、これらすべて長岡先生の数十年に渡る指導者経験で培ってきたものの集大成なのだろう。
また、長岡先生は前作に「本質の研究」という参考書を書かれていて、一応はその改訂版という形で本書「総合的研究 数学」が出版されたが、もはや改訂どころではなく、長岡先生のまったくの新しい参考書と考えていい。
それほど「本質の研究」から進化しており、もはや「改訂」という一言では表せない。
まずはページ数がほぼ倍になっている。
この原因としては、前作より「解説をさらに噛み砕いたり」、「新たな解説をたくさん書き加えたり」、「掲載問題数の大幅な増加」が挙げられる。
各章・セクションの最初の導入部分における問や例題の数が、前作より飛躍的に増えている。
そのおかげでただ本質的な理解ができるだけでなくて、基本的な解法・計算を身に付けることができる。
また章末問題も大幅に増えた。
これで前作以上に多くの難易度のある問題に触れられるようになった。
これで到達度も前作より遥かに高くなっている。
もはや欠点らしい欠点など「分厚い」くらいしか思いつかないくらいの、長岡先生の最高の一冊だ。
【総合的研究数学の使い方】
本書の使い方だが、まず本書はチャートみたいな網羅系参考書ではない。
この参考書は少ない問題で本質を身に付けさせるためのものなので、チャートみたいな網羅系参考書とは目標が違う。
いくら問題が増えたとは言え、それはあくまで本来の目的である「少ない問題量で本質を身に付ける」という目標のためのもので、これで演習量が十分と言うわけではない。
というわけで演習量を増やすためには他の問題集は必ず必要になる。
また、この1000ページにも及ぶ参考書を最初から全部読む必要はない。
もちろん学校の授業と並行してやっていくと言うのであれば最初から読んでもらっても問題ないし、むしろ理解が深まると言う点でいいことだ。
だが、すでに2年の後半や受験生になっている人が最初から使うには遅すぎる。
そういう人は苦手な分野だけつまんでやっていく、辞書として使う、などいろいろ方法はある。
とにかく大学入試で数学を使う人は持っていて損はない参考書だと思われる。
【総合的研究数学の総評】
参考書や演習書に加え、本書のような総合的研究書をも手にすると、数学史を含む、見取り図的見通しがよくなり、解く数学から「みる数学」への架橋も可能になり、問題に相対したときの援け舟にもなりうるものと考えられる。
ただ全て完璧に読もうとすると、高校3年間この本だけで終わってしまいそうなボリュームの本。
しかし非常に数学の本質をついていて、他の問題集をやっていてしっくりこない所を、本書で調べてみると、しっくりくる良質の参考書である。
チャート式と違って、問題・例題は掲載されているが、これを使って問題集代わりに使うと、本当に時間が無くなってしまうので、要注意だ。
著者の長岡先生は非常に教育熱心な方で有名で、一つの問題に対してもいろいろな角度からアプローチして、思考力を高める本を書く事に定評がある。
数学は大学でも大いに使うので、受験終了後も本書は大切に持っておいた方が良い。